『確率と計算』 第6章
6 The Probabilistic Method
- ある特徴をもった対象が存在することを証明する方法
- この方法による存在の証明から、ある特徴をもった対象を構成する確率的なアルゴリズムができる
- 一部は derandomization により、確率的なアルゴリズムから決定的なアルゴリズムにすることができる
6.1 Basic Counting
- 適切な確率空間 $\mathcal{S}$ を構成する
- 必要な特徴をもつ対象が $\mathcal{S}$ に含まれる確率が正であることを証明する
例題: 辺の色塗り問題
- 完全グラフ: 任意の2頂点間に辺があるグラフ
- クリーク: あるグラフの点の部分集合について、その集合から誘導されるグラフが完全であること
- 辺の色塗り問題
- coloring the edges of a graph with two colors so that there are no large cliques with all edges having the same color.
$K_n$ を $n$ 頂点のグラフとする。$K_n$の $k$-クリークは完全なサブグラフ $K_k$ とおく。
定理 6.1
\[ {n \choose k} 2^{-{k \choose 2} + 1} < 1 \]
であるとき、1色だけの $K_k$ がないように、 $K_n$ の辺を2色で塗りわけることができる。
6.2 The Expectation Arguments
平均を利用する方法もある。背景としては、離散確率空間では、 確率変数について、平均より大きくない値が少なくとも1つあり、 また平均より小さくない値が少なくとも1つあると、ある正の確率で仮定できる。
Lemma 6.2
確率空間 $\mathcal{S}$ があり、その上での確率変数 $X$ について $\mathbf{E}[X]=\mu$ である。このとき $\mathrm{Pr}(X\ge\mu)\gt0$ であり、 $\mathrm{Pr}(X\le\mu)\gt0$ である
応用はグラフのラージカットをもとめる問題(NP-hard)。
定理 6.3 $m$個の辺をもつ無向グラフ$G(V,E)$で、 少なくとも $m/2$ 個の$A$の点から$B$の点を結ぶ辺をもつように $V$ を2つの互いに素な集合 $A$, $B$にわける方法がある。
ラスベガスアルゴリズムは、頂点を$A$, $B$にわけて、$A$ から $B$ にむかう辺の集合を得る。 これを ${m \over 2} + 1$ 回くりかえして、最大のものをえらぶ。
6.3 Derandomization Using Conditonal Expectation
決定的なアルゴリズムの考えかた
$k$個の点を$A$,$B$にふりわけた状態で、のこりの点をランダムに$A$,$B$にふりわけたとき、 のカットの値の期待値 $\mathbf{E}[C(A,B)|x_1,x_2,x_3,…,x_k]$ をかんがえる。 $x_i$ は頂点 $v_i$ が $A$, $B$ のどちらにふりわけられたかをあらわす。
6.4 Sample and Modify
ランダムにつくったあと、期待する性質をもつように改変する。
定理 6.5 $G=(V,E)$ を $n$ 個の頂点、 $m\ge n/2$ 本の辺をもつとする。 $G$ は少なくとも $n^2/4m$ 個の頂点をもつ independent set – 辺をもたない頂点の集合 を含む。
定理 6.6 任意の $k \ge 3$ について、十分に大きい $n$ について、 内周(girth)が少なくとも $k$, 辺が ${1 \over 4}n^{1+1/k}$ 本の辺をもつ $n$ 頂点のグラフが存在する。
6.5 The Second Moment Method
定理 6.7 $X$ が整数値をとる確率変数としたとき、以下が成立する。
\[ \mathrm{Pr}(X=0) \le {\mathbf{Var}[X] \over (\mathbf{E}[X])^2} \]
定理 6.8 $G_{n,p}$ で $p=f(n)$, $f(n)=o(n^{-2/3})$ とする。そのとき 任意の $\epsilon > 0$ かつ、十分に大きい $n$ について、 $G_{n,p}$ から生成される あるグラフが4個以上の頂点をもつクリークを含んでいる確率が $\epsilon$ より小さい。 同様に、$f(n)=\omega(n^{-2/3})$のとき、十分に大きい $n$ について、 $G_{n,p}$ から生成される あるグラフが4個以上の頂点をもつクリークを 含まない 確率が $\epsilon$ より小さい。
6.6 The Conditional Expectation Inqeuality
定理 6.10 $X=\Sigma_{i=1}^{n}X_i$ で, $X_i$ は0-1の確率変数とする。このとき
\[ \mathrm{Pr}(X>0) \ge \sum_{i=1}^n{\mathrm{Pr}(X_i=1) \over \mathbf{E}[X|X_i=1]} \]